Home » 所有文章 » 婚姻平權 » 第1回:同性でも結婚できるようになった台湾

第1回:同性でも結婚できるようになった台湾

第1回:同性でも結婚できるようになった台湾

伴盟評論:日本長期關注與研究台灣婚姻平權運動的鈴木賢教授,今年終於和我們一起見證了5/24台灣同婚歷史性的第一天,鈴木教授用釋字748及524當日參與伴侶盟兩對佳偶(秘書長簡至潔、許秀雯律師以及伴侶盟現任理事長Alex和Joe)重返台北中正戶政登記作為開場白,向日文讀者介紹台灣同婚法制化的歷史。

[2019.07.18/tokyorainbowpride/鈴木賢教授]

待ちに待った結婚届

 去る2019年5月24日午前8時、私は台北市中正戸政事務所へ向かった。この日から台湾全域で司法院釈字第748号解釈施行法(いわゆる同性婚法)にもとづいて、性別が同一の両当事者間でも結婚の登録が受け付けられるのを、この目に焼き付けるためである。台湾で戸籍事務を扱う自治体の各戸政事務所には、朝8時にはすでに当事者やその支援者、家族、マスコミ関係者などが、大勢集まっていた。

 台北市の中心部にある中正戸政事務所は、婚姻平等化運動の先頭にたってこの運動を率いてきたレズビアンの許秀雯弁護士らが、2014年に30組の同性カップルとともに結婚登録をしようと試みた因縁の場所であった。その時には彼女らの届出は受理されることはなかったが、いまこその無念を晴らそうと、彼女とそのパートナー、簡至潔さんのカップル、男性カップルの邱亮士さんと曹朝郷さん、台湾伴侶権益推動連盟(以下、伴侶盟と略。)のこのふた組の同性カップルは、敢えてこの日、この中正戸政事務所を選んで結婚届を出すこととしたのである。そこにはまさに「重返中正戸政、完成同婚登記」(中正戸政事務所へ舞い戻り、同性間の結婚届を完遂する)との思いが込められていた。

 中正戸政事務所のフロアーが大勢の人でごったがえすなか、8時半くらいから戸籍の受付窓口が開いた。同性カップルが届出の窓口の前に座って、必要書類を戸籍担当者に渡して、登録を待った。担当者は異性間の結婚届を受け付ける時と同じように、慣れた手つきでパソコンのキーボードをたたき、新しい国民身分証を作成して、その場でふたりに手渡した。台湾の国民身分証(国が発行するIDカード)の裏には、両親の氏名、そして配偶者の氏名を印字する欄がある。同性のパートナーをもつ人の身分証には、これまでけっして書かれることのなかったパートナーの氏名が、それぞれのカードの配偶者欄にくっきりと印字された瞬間であった。こうしてものの30分で新婚の「妻妻」「夫夫」(ふうふ)が次々と誕生した。この間、台湾同性婚運動のパイオニア、祁家威氏が1986年に男性間の結婚をもとめて裁判所に公証を求めてから33年、多様な家族の法的承認に取り組む伴侶盟が2009年に誕生してから数えても、10年の月日が流れていた。2019年5月24日、台湾のLGBTが待ち望んだ歓喜の日を迎えたのである。

中正戸政事務所で結婚届を出した許秀雯さん(左)と簡至潔さん。

 台北市の中心部にある中正戸政事務所は、婚姻平等化運動の先頭にたってこの運動を率いてきたレズビアンの許秀雯弁護士らが、2014年に30組の同性カップルとともに結婚登録をしようと試みた因縁の場所であった。その時には彼女らの届出は受理されることはなかったが、いまこその無念を晴らそうと、彼女とそのパートナー、簡至潔さんのカップル、男性カップルの邱亮士さんと曹朝郷さん、台湾伴侶権益推動連盟(以下、伴侶盟と略。)のこのふた組の同性カップルは、敢えてこの日、この中正戸政事務所を選んで結婚届を出すこととしたのである。そこにはまさに「重返中正戸政、完成同婚登記」(中正戸政事務所へ舞い戻り、同性間の結婚届を完遂する)との思いが込められていた。

台北市政府も同性婚のスタートをお祝い

 同日午前11時、台北市の東側、市役所近くに位置する信義戸政事務所前の芝生が広がる野外広場には、強い南国の太陽が照りつけていた。すぐ脇を見上げると台北の新たなランドマーク、101ビルがそびえ立つ。ここで台北市政府と婚姻平等プラットフォーム台湾LGBT諮詢ホットラインなど同性婚実現に尽力したNGOが共催で、「幸福起跑線」(幸せのスタートライン)と題した同性新婚カップルの誕生をお祝いするセレモニーが開催された。婚姻届を出したばかりの女性同士、男性同士のカップル十数組が、レインボーフラッグが敷かれたバージンロードを通って、こぼれんばかりの笑顔で次々と入場。新婚カップルがキスで祝福に応えると、会場は集まった人たちからの大きな歓声で包まれた。ステージでは台北市の副市長から祝辞が述べられ、一組ずつ副市長から入籍を証明する戸籍簿が手渡された。また、大使館に相当する在台湾のスペイン、イギリス、EUなど各国の外交使節の代表からもお祝いのスピーチがあった。日本と台湾はこんなに近いのに、在台北の日台交流協会の代表の姿は、ない。まだ同性婚が実現していない日本の代表には声がかからなかったのであろう。

 会場には台湾同性婚運動のレジェンドでゲイの祁家威氏、同性婚運動の総仕上げの旗振り役を担った婚姻平等プラットフォームの代表でレズビアンの呂欣潔さんらの晴れがましい顔もあった。広場内のブースでは各国代表部が用意したワインやスナック・フードなどが振る舞われ、参加者は容赦なくギラギラと照りつける太陽のもと、歓喜の祝杯を交わした。日本では同性愛者のことを隠花植物などと呼んで日陰者扱いすることがあるが、法律が同性カップルを平等に扱うということが、何を意味するかを絵に描いて見せられた思いがした。台湾の同性愛者は、この日から日陰に身を潜める必要はなくなったのである。

信義戸政事務所前の広場での結婚祝賀会の参加者たち。

台北市副市長から戸籍簿を受け取る新婚ゲイ夫夫。

初日の届出は526組

 全国で5月24日に結婚届を出した同性カップルは、526組に及んだ。このうち女性同士が341組(約65%)、男性同士が185組と、女性カップルが3分の2を占めた。これは2015年から始まっていた自治体の同性パートナーの登録と同じ傾向である。また、離島の澎湖県と連江県(馬祖群島)を除く、すべての自治体で届出がなされ、同性カップルが台湾全域で生活していることを実証した。届出が多かったのは、新北市117組を筆頭に、台北市95組、高雄市72組、台中市65組、台南市39組、桃園市36組となっており、ほぼ人口数に比例した届出数であった。

 また、一方が外国人であっても、その本国法で同性間の婚姻が法制化されている場合は、台湾の戸政事務所で結婚届が受理され、オランダなど26カ国(*1)の同性婚先行国の国民との間では、国際同性婚が成立する。これは台湾の国際私法にあたる渉外民事法律適用法46条(*2)の規定にもとづくもので、日本はまだ同性婚を法制化していないので、実際にかなりの数に上ると推察される台湾人と日本人の同性カップルの間に、今回の新法にもとづく婚姻を成立させることはできない。また、同様に台湾人と中国人の間でも同性間で結婚することはできない。

 この日、早くも台湾人の同性パートナーと結婚した南アフリカ籍の人が、内政部移民署台北サービスステーションで配偶者としてのビザの申請が受理されたことが報じられている。同性婚ができるということは、外国籍の同性パートナーに配偶者としての在留資格を与えるということなのである。この点でも異性の配偶者と平等な権利が保障されることになる。

[*1]内政部のサイトによると対象となるのは以下の26カ国。アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ(一部の地域)、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、イギリス(一部の地域)、アメリカ、ウルグアイ。https://www.ris.gov.tw/app/portal/2121?sn=1558500077408
[*2]台湾渉外民事法律適用法46条「婚姻の成立は、各当事者の本国法による」。なお、日本の国際私法である「法の適用に関する通則法」24条にもほぼ同様の規定があり、将来、日本で同性婚を法制化した場合にも同様の問題が生じうる。

総統府前広場での野外合同披露宴

 翌日25日の夕方6時から、それまで何度も同性婚の実現を訴えてデモをした総統府前の広場、凱達格蘭(ケタガラン)大道を閉鎖して伴侶盟主催の合同結婚披露宴「同婚宴」が盛大に催された。台湾には屋外にたくさんのテーブルを並べ、料理をケータリングで取り寄せて、長時間にわたって大勢で飲み食いする「辧卓」という風習がある。異性カップルでも道路や広場を占拠して、よくこういうスタイルで披露宴を開くことがある。この形態のパーティは開始、終了時間や招待客の人数、いずれもアバウトで、台湾らしい「ゆるさ」が心地よい。この日は前日、結婚届を出したばかりの同性カップルを招待し、賑々しく露天合同披露宴が開かれたのである。前売り入場チケットはLGBTの当事者を中心に早々と売り切れたという。伴侶盟の背後に、これほど多くの当事者が控えて応援していたのだということが分かる。

 伴侶盟は2013年に同性婚実現に向けて民法改正案をはじめとする3つの多元的家族法案(同性婚、パートナーシップ制度、性愛を前提としない家制度)を作成し,公表している。これが台湾における同性婚法制化へのスタートラインとなったが、実は伴侶盟は、この時もこの場所で1,200席を埋める「辧卓」をやっている。同性婚が実現した暁には、またこの凱道(ケタガラン大道)へ戻って、大宴会をやろうと誓っていたのだという。6年後のこの日、ようやくその夢がかなったのである。

総統府前広場での「同婚宴」のひとこま。

日本が台湾を植民地統治していた時代に総督府として建てられた総統府の前には、臨時のステージ(実はこれは大きなトラックの荷台を開いたもの)が登場し、巨大スクリーンとスピーカーがしつらえられた。その前には丸テーブルが160卓、各卓に10脚、合計で1,600脚の赤いプラスチック製のスツールが並べられ、各テーブルには次々と台湾風の中華料理が運ばれてくる。

 ステージでは同性婚を応援してきた歌手による歌、ドラァグクイーンやゴーゴーボーイのパフォーマンスが披露された。伴侶盟のリーダー、許秀雯さん、簡至潔さんカップルは、この10年の運動を振り返って、晴れがましくご挨拶。走りきった爽快感で満ちあふれ、まばゆいばかりの勇姿を見せてくれた。祁家威氏もこの日、午後、開催された宜蘭県でのプライドパレードを終えて、慌ただしく台北に舞い戻り、合同披露宴では筆者と同じテーブルに座った。国会に同性婚を法制化するための法案を4度にわたって提出し、最後は行政院が提出した司法院釈字第748号解釈施行法の採択に尽力した政治部門の功労者、尤美女立法委員など、同性婚法制化を推進した国会議員も顔を見せた。

 夜のとばりが降りた頃、昨日、結婚した新婚同性カップル20組が次々と入場し、総統府前の盛り上がりはクライマックスに達した。ウェディングドレスやタキシード、着ぐるみなど、思い思いの衣装に身を包むカップルが、会場の人たちに見守られながらレッドカーペットを歩き、指輪を交換して愛を誓った。

祁家威氏(左)、尤美女立法委員(中)。「同婚宴」にて。

 総統府前という場所は、日本で言えば国会議事堂前、霞ヶ関といった台湾政治の心臓部である。敢えてこの場所で「同婚宴」を催すことに重大な意義がある。折しも今年で落成からちょうど100周年を迎えた総統府の塔に見下ろされた広場が、ようやく結婚というスタートラインに就くことができるようになったLGBTを祝福する熱気に包まれたさまは、壮観の一言に尽きた。台湾同志(*1)が平等なこの国の主人公になったことが実感された。同性婚の実現というテーマが、まさに政治的な課題であり、LGBTというマイノリティがそれをやり遂げたことを、政治の中心から台湾中にアピールする、そういう象徴的な意味が込められていたのである。

[*1]中国語の「同志」は現在、性的マイノリティの総称、LGBTとほぼ同義の言葉として使われている。

ストーンウォール暴動50周年NYCプライドに現れたTAIWAN

 今年はアメリカ・ニューヨークで起きたストーンウォール暴動から50周年の記念の年にあたり、15万人が参加する「WorldPride」が開催された。台湾からも祁家威、呂欣潔、台湾諮詢LGBTホットラインのメンバーをはじめとして、約200名ものLGBTが、6月30日、NYCプライドマーチに参加した。直前に同性婚を法制化した台湾チームは、アジアで初めての同性婚法制化を成し遂げたことを、世界に向かって誇らしげにアピールした。ニューヨークの中心部をアルファベットTAIWANの6文字を堂々と掲げて行進できたことで、日頃中国から抑圧を受けている台湾人をとりわけ興奮させた。

 というのも、現在、台湾は国際組織からほぼ完全に追放された世界の孤児状態にあるからである。オリンピックをはじめとする国際的なスポーツ大会には、台湾ないし正式の国名である中華民国を使うことが許されず、国旗である青天白日旗を使うこともできない。やむなく「中華台北」Chinese Taipeiという名称、特別な旗で参加することを余儀なくなれている。これはむろん中華人民共和国が、中華民国が存在することを承認させないと同時に、台湾の独立も阻止するために妨害工作をしているからである。LGBTの当事者運動が低調な中国からはチームとしての参加はなく、プライドパレードならば、台湾としての参加が可能になる。LGBTの市民運動の世界は、台湾人にとって数少ない自分たちをありのままに主張できる場なのである。

誇らしげにTAIWANとして、NYC Prideマーチを行進。

法施行1カ月で1,173組が届出

 国レベルで戸籍事務を管轄する内政部の発表によると、同性婚法の施行から1カ月を経た2019年6月22日までに、性別を同じくする両名間の婚姻届は、合計で1,173組に達した。女性同士が790組(約67%)、男性同士が383組であった。登録数が最多だったのは新北市で242組、次いで台北市198組、高雄市159組、台中市141組、桃園市123組、台南市82組と続く。人口の少ない馬祖の連江県ではまだ届出がない。また、台湾人と外国籍のカップルは28組あったという。この時点ですでに2組(屏東県と苗栗県)が離婚している。

 このように台湾にはすでに夫婦同様の生活実態を備えた同性カップルが、相当数に上っていて、同性婚法施行の準備がとうに整っていたことが知れる。次回以降は、同性婚法の制定に至るプロセスをたどり、台湾がなぜアジアで初の同性婚法制化を成し遂げたかに迫りたい。

文章連結